アルバム評
     第一回は、あのHATO・POP・POの「オカエリ」です。


 ♪  ♪  ♪




このアルバムは、1997年12月にリリースされたHATO・POP・PO初のフルアルバムである。


まず、ジャケットを眺めてみよう。


落ち着いたグリーンを基調になんだか雀のような鳥が描かれているが、


これは「はと」であろう。


 このシュールなイラストに、これもシンプルでシュールな、一見てきとーに書いて


しまったような字体でアルバムタイトルが書かれている。とても、センスが良い。


 恐らく、Vo、G、クラリネットを担当する「うっちゃん」によるものと思われるが、


やはり彼女は天才である。






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      さて、ディスクを取り出して針を落としてみる。


…音が出ない!


 そうであった、これはレコードではなくコンパクトディスクだった。


レコードプレーヤーからCDプレーヤーに素早く移し、プレイボタンを押す。


しばらくの間の後、聞こえてきたのは、無名だった彼女達を一気にスターダムへ押し上げた


あの名曲「あの人は受験生」である。


涙が出そう!
 アコースティックギターのみのシンプルな演奏は、あの日の学園祭のステージで聴いた音のようでいて、


あの頃のようないつ止まるかわからない、いつ間違えるかもしれないようなスリリングさはない。
ジャケットのクレジットを見るとアコースティックギター“Eiji Yamasaki”とある。






…やはり…






しかし、うっちゃんは歌う「…私は大学生、なのにあなたは受験生…」


なにかがこみ上げてくる。


さらに曲は進んで、「琴線花」から「You are 16」へ。


このあたりの曲は、もう涙ものである。


なにか、18、19才頃の春のにおいがしてくる。


つまり、古い下宿屋のにおいや、しとしとと降る春の夜の雨、1号館の教室のにおい………






      琴線花にフィーチャーされたガットギターの音が暖かい。






つぎに「To You」。


ぬまやん、歌がうまくなる本を買って練習したらしい、恐るべし!


「あなたにマフラーを編むために」は、期待のうっちゃんのクラリネットではなく、


そのパートにはカズーがフィーチャーされている。






これはこれで、さらにコミカルさが表現されてよいかも。






「桜川」から「Moonlight Tonight」へ


相変わらず安定したシンプルなギター演奏をバックに名曲達が息を吹きかえす。


最後の曲は、唯一彼女達が社会へ出てから作ったという「素顔のサンドリヨン」である。






 ここで初めて耳にするが、素朴で暖かい「うっちゃんワールド」と


HATO・POP・POハーモニーは健在である。






 全体を通して安定した演奏のおかげで、「曲も良いけど、この人達ギターもうまいな~」


なんて聞き方でなく、じっくりHATO・POP・POのうたを聞くことができる。


中には、二人のあのスリリングなギタープレイを期待した人もいたようだが、


それは今でもライブで十分聴ける。






 それより、ただ懐かしさだけではなく、アルバムとして聴かせることを十分に意識した


構成、演奏、録音等で完成度の高いアルバムではないだろうか。






                         By ち~ぼ~(85期)